2026年11月3日(火)監視人についてXnote
横浜市政の監視人 横浜市の予算と決定を、数字で追う

都市づくり・旧上瀬谷

旧上瀬谷通信施設の跡地はどうなる?花博のあとに何が残り、横浜市はいくら払うのか

2026年11月3日・横浜市政の監視人

この記事の要点

  • 旧上瀬谷通信施設は2015年に返還された約242haの土地。2027年3月19日〜9月26日に、南側でGREEN×EXPO 2027(国際園芸博覧会)が開かれる
  • 会場建設費は320億円から最大417億円に増えた。入場券は2026年9月18日時点で約261万枚。有料来場者の目標1,000万人の約26%
  • 2026年度の市予算は、花博関連が約150億円(うち会場建設の市負担38.09億円)、上瀬谷の土地区画整理が約171億円。公園整備費は他の公園と合算で、上瀬谷分は公表されていない
  • 閉幕後の約70haには、11社がテーマパークを計画(2030年代前半開業・年1,200万人)。市にいくら入るのかの数字は、まだ示されていない

横浜市瀬谷区と旭区にまたがる「旧上瀬谷通信施設」。広さは約242ha、東京ドーム約50個分です。2015年に米軍から返還され、横浜に残る最後の大きな未利用地の一つになりました。

この土地では、2027年3月19日から9月26日まで、国際園芸博覧会「GREEN×EXPO 2027」(いわゆる花博)が開かれます。そして花博が終わったあと、跡地にはテーマパーク、物流・産業の拠点、農地、防災公園ができる計画です。

ニュースは「花博まであと何日」「チケットが何枚売れた」を伝えます。でも、市民にとって本当に大事なのは花博のあとに何が残り、市がいくら払って、いくら返ってくるのかです。この記事では、市と博覧会協会の資料からそこを数字で整理します。

監視人の立場は、横浜の財政は削るより稼ぐことで立て直すべきで、だからこそ閉幕後の跡地が市に何を返すのかを、今のうちに数字で示させるべき、というものです。

旧上瀬谷通信施設とは?返還から花博までの経緯

旧上瀬谷通信施設は、戦後、米軍の通信施設として使われてきた土地です。2004年の日米合意で返還の対象になり、2015年6月30日に返還されました。

横浜市内の米軍施設は、2004年の時点で8施設・区域、約528haありました。上瀬谷の242haは、その半分近くを占める最大の返還です。

返還からの主な出来事を、市の資料から時系列で並べます。

時期 出来事
2015年6月30日 上瀬谷通信施設(約242ha)が返還
2020年3月 土地利用基本計画を策定(農業振興・観光賑わい・物流・公園防災の4地区)
2021年12月 瀬谷駅からの新交通システムを、花博までに開業することを断念
2023年9月14日 観光・賑わい地区の事業予定者に三菱地所を決定
2025年3月10日 花博の会場建設費を320億円から最大417億円へ増額
2026年3月19日 花博の入場券の前売りを開始
2026年4月15日 テーマパーク等の環境影響評価(計画段階配慮書)の縦覧開始
2026年9月18日 来場日時の予約、4駅からのシャトルバス・駐車場の予約を開始
2027年3月19日 GREEN×EXPO 2027 開幕(〜9月26日)
2028年以降 テーマパーク等の工事に着手(予定)
2030年代前半 テーマパーク開業、新たな交通の供用(目標)

出典は横浜市「市内の米軍施設の状況」、横浜市「横浜市の市政と財政運営」(IR資料、2026年5月)、市会常任委員会資料「旧上瀬谷通信施設における基盤整備等の状況について」(2025年9月18日)です。

土地の持ち主は、返還時点で国が45.2%、民間が45.4%、市が9.4%です。民有地の地権者は約250人で、約70年間、米軍施設として土地の使い方を制限されてきました。そのため、市が土地区画整理事業(約248.5ha)を自ら施行し、土地を入れ替えながら道路などを整備しています(横浜市「旧上瀬谷通信施設地区の概要」)。

ポイントは、土地の使い道は2020年に4つの地区に分けて決まっていることです。花博はその一部(南側の約100ha、会場区域は約80ha)を一時的に使うイベントで、本番はその後の土地利用です。

GREEN×EXPO 2027(花博)の中身と、増えた建設費

GREEN×EXPO 2027は、国際園芸家協会が認める最上位の「A1クラス」の園芸博覧会です。会期は2027年3月19日から9月26日までの約半年。参加者の目標は1,500万人、そのうち有料の来場者は1,000万人以上としています。日本経済新聞の報道(2026年9月15日)によると、参加が決まった国は74か国・5国際機関です。

会場建設費は320億円から417億円へ

会場を造るお金は、2025年3月に大きく増えました。

花博の会場建設費(億円・上限)
当初320
2025年3月の変更後417

増えた97億円の内訳は、資材費・人件費の上昇で111億円、予備費20億円、コストを抑える工夫で34億円の減額です。会場建設費は、国・地方公共団体・民間で3分の1ずつ負担する決まりで、変更後はそれぞれ139億円になります。

出典は2027年国際園芸博覧会協会「会場建設費の変更に関するプレスリリース」(2025年3月10日。協会サイトの最新情報。旧URLは削除済み)です。

大阪・関西万博でも会場建設費の増額が問題になりました。資材と人件費の高騰は横浜だけの責任ではありません。それでも、「上限」として示した額が一度動いた以上、閉幕後の決算で最終的にいくらかかったのかを必ず公表することは、最低限の約束だと考えます。

入場券は約261万枚。目標1,000万人の約26%

入場券は開幕1年前の2026年3月19日に前売りが始まり、博覧会協会が毎月の販売枚数を公表しています。

GREEN×EXPO 2027 入場券の累計販売枚数(万枚)
2026年6月18日時点46.2
2026年7月18日時点218.1
2026年8月18日時点233.3
2026年9月18日時点261.0

出典は2027年国際園芸博覧会協会「入場チケットの販売状況について」(2026年9月25日ほか各月の公表)です。

協会の公表では、9月18日時点の261万枚のうち、258万枚が早割の1日券です。6月から7月にかけて約172万枚増えていますが、誰がどう買ったのかの内訳は公表されていません。

有料来場者の目標1,000万人に対して、9月時点で約26%です。開幕まであと約4か月半、会期中の販売もあるので、今の時点で「足りない」と断定はしません。ただ、買い手の内訳と、実際に来場予約まで済んだ枚数を分けて公表してほしいと考えます。売れた枚数と、来る人の数は別物だからです。

なお、原沢市長は10月、報道機関のインタビューで「機運を醸成して来場者を増やすため、積極的に動く」と述べ、首都圏や関西での発信に力を入れる考えを示したと報じられています(東京新聞・共同通信、2026年10月28日)。

横浜市は花博と上瀬谷にいくら払っているのか

ここからが本題です。花博と上瀬谷のまちづくりに、横浜市は2026年度だけでいくら使うのか。市の令和8年度予算の主要事業から拾います。

事業 2026年度の事業費 誰が払うか(分かっている分)
花博の会場建設等 86.97億円 市38.09億円、民間(企業版ふるさと納税など)48.88億円
花博の市の発信・活動 36.19億円 市の事業
花博の交通輸送対策 27.11億円 市の事業
旧上瀬谷 土地区画整理事業 171.16億円 特別会計で経理。一般会計からの繰入は41.0億円(残りの財源の内訳は未確認)
公園整備事業 230.03億円 上瀬谷公園が中心だが、野毛山動物園や身近な公園も含む。上瀬谷分は未公表

※「事業費」は事業全体の額で、国の補助金や市債を財源に含む場合があります。市が税金から出す額(純負担)とは一致しません。

出典は横浜市「令和8年度予算 資料編(主要事業一覧)」です。区画整理を経理する特別会計(市街地開発事業費会計)には、一般会計から41.0億円が繰り入れられています(令和8年度予算に関する説明書 特別会計予算)。

旧上瀬谷・花博関連の2026年度予算(億円)
公園整備事業(上瀬谷公園中心・他公園含む)230.0
土地区画整理事業171.2
GREEN×EXPO 2027関連150.3

上瀬谷のためと分かっている額は、花博関連の約150億円(うち会場建設の市負担は38.09億円)と、土地区画整理の約171億円です。区画整理の特別会計には、一般会計から41.0億円が入っています。

公園整備の230億円は、上瀬谷公園が中心とされていますが、他の公園の分も含みます。市の資料では上瀬谷分だけの内訳が見当たらず、ここは市に出してほしい数字の一つです。上のグラフの3つを単純に足すと約551億円ですが、これは上瀬谷以外の公園を含む参考値です。

規模感をつかむために、わたしの計算を一つ置きます。花博関連の150億円を、参加者目標の1,500万人で割ると、1人あたり約1,000円です(2026年度の1年分だけで、過去・翌年度の予算や国・民間の負担は含まない、わたしの概算です)。

この1,000円が高いか安いかは、来場者が横浜でどれだけお金を使い、跡地が何を生むかで決まります。つまり、花博の評価は、閉幕後の跡地とセットでしかできないということです。

花博のあと、跡地はどうなる?テーマパーク・物流・農業・防災

2020年の土地利用基本計画では、旧上瀬谷を4つの地区に分けています。

地区 市の計画
観光・賑わい地区 テーマパークを核とした複合的な集客施設で、国内外から人を呼び込む
物流地区 東名高速や保土ケ谷バイパスに近いことを生かし、新技術を使った国内物流の拠点にする
農業振興地区 収穫体験・農体験、ICTを使った生産、直売所などで「収益性の高い農業」を行う都市農業のモデル拠点
防災・公園地区 花博のレガシーを継ぐ公園と、消防・警察・自衛隊の受け入れや広域避難場所になる防災拠点

このほか、道路、調整池、新たな交通や新しいインターチェンジの用地も計画されています(横浜市「旧上瀬谷通信施設地区の概要」)。面積の詳しい内訳が分かるのは、次に書く観光・賑わい地区(約70.65ha)です。他の3地区も、事業者や完成時期が決まるたびに、この記事に書き足します。

テーマパーク計画:開業時に年1,200万人

いちばん注目されているのが、観光・賑わい地区(約70.65ha)のテーマパークです。2023年9月に三菱地所が事業予定者に決まり、2024年3月には相鉄ホールディングス、東急、東急不動産、三菱倉庫と企業連合をつくりました。

2026年4月に縦覧が始まった環境影響評価の配慮書では、三菱地所を代表とする11社が、次世代型のテーマパーク(仮称「KAMISEYA PARK」)を計画しています。工事の着手は2028年以降、開業は2030年代前半。来街者は開業時に年1,200万人、将来は年1,500万人超を見込みます(建設通信新聞の報道、2026年4月16日ほか)。

来場・来街の見込み(万人)
花博(約半年・参加者目標)1500
テーマパーク開業時(年間)1200
テーマパーク将来(年間)1500

半年の花博と同じ規模の人が、テーマパークには毎年来る計画です。これが実現すれば、横浜西部の大きな稼ぎ手になります。

市にいくら入るのかは、まだ示されていない

ところが、テーマパークが市に何を返すのか、という数字は見当たりません。

  • 市有地を貸すのか、売るのか。貸すなら地代は年いくらか
  • 固定資産税・都市計画税は年いくら見込めるのか
  • 雇用は何人で、そのうち市内の人は何人か
  • 交通や上下水道など、市が追加で負担するインフラはいくらか

上瀬谷には、2026年度だけで区画整理と公園に数百億円を入れています。その投資を、テーマパークと物流地区からの税収で何年で回収するのか。これが市民に示されるべき「答え合わせの式」です。

大きな土地の使い道は、一度決まると数十年動きません。都心の山下ふ頭の再開発でも、決め方と数字が見えないことを監視人は問題にしてきました。上瀬谷でも、同じ物差しで見ていきます。

交通はどうする?新交通システムは断念、バス専用道は2030年代

上瀬谷の弱点は交通です。土地の中や隣に、鉄道の駅がありません。

市はもともと、瀬谷駅と上瀬谷を結ぶ新交通システム(無人で走る鉄道のような乗り物)を計画していました。しかし2021年12月、花博までの開業を断念しています。

代わりに検討されているのが「瀬谷バス専用道線」です。瀬谷駅と上瀬谷を結ぶ約2.7kmのうち約1.7kmを地下トンネルにして、バス専用の道を通す計画で、2030年代前半の導入を目指しています(タウンニュース瀬谷区版、2026年1月22日)。将来は自動運転や隊列走行のバスも想定しています。

つまり、花博の期間中は専用の交通がまだ無い状態です。花博では、4つの駅からのシャトルバスと事前予約制の駐車場で来場者を運びます。2026年度予算には交通輸送対策として27.11億円が入っています。

心配なのは周辺の渋滞と、近くに住む人の暮らしです。シャトルバスで1日にどれだけの人を運べるのか、ピーク時に周辺道路がどうなるのか。会期中の輸送実績と渋滞の状況を、週ごとに公表してほしいと考えます。その数字は、テーマパークの交通計画を考えるうえでも、そのまま使える材料になるからです。

監視人が求める「数字の約束」

ここまでをまとめると、旧上瀬谷で問われているのは次の3つです。

  1. 花博の費用対効果:建設費417億円(上限)と市の関連予算に対して、来場者と経済効果はどうだったか
  2. 跡地の収支:区画整理と公園に入れたお金を、テーマパーク・物流地区の税収や地代で何年で回収するのか
  3. 交通の現実:鉄道の無い土地に、年1,200万人を運べるのか

今の市政に一番足りないのは、決め方と効果を数字で示すことだと監視人は考えています。花博と上瀬谷も同じです。「やってよかった」を言うための数字を、開幕前の今のうちに決めておくべきです。

具体的には、次の指標を、市が事前に目標値つきで公表することを求めます。

指標 なぜ必要か
有料入場者数(実来場ベース) 売れた枚数ではなく、来た人数で評価するため
来場者1人あたりの市内消費額 「横浜にお金が落ちたか」を測るため
会場建設費の最終額と市の負担額 上限417億円に対して、いくらで終わったかを確かめるため
跡地からの年間税収・地代の見込み 区画整理と公園への投資の回収年数を出すため
会期中の輸送実績と周辺の渋滞 テーマパークの交通計画の材料にするため

横浜市は、市の長期財政推計で毎年300億〜340億円程度の収支不足が続く見込みです(令和9年度予算編成の当面の進め方(2026年9月)、詳しくは横浜市の財政の記事)。削るだけでは立て直せない以上、旧上瀬谷のような大きな土地で「稼ぐ」ことは欠かせません。だからこそ、稼げたのかどうかを数字で確かめられる形にしておく必要があります。

よくある質問

旧上瀬谷通信施設の読み方と場所は?

「きゅうかみせやつうしんしせつ」と読みます。所在地は瀬谷区の北町・瀬谷町・中屋敷三丁目と、旭区の上川井町です。市は相鉄線の瀬谷駅と結ぶ交通を計画しています。

GREEN×EXPO 2027とテーマパークは同じもの?

別のものです。GREEN×EXPO 2027は2027年3月19日〜9月26日の約半年だけ開かれる国際園芸博覧会です。テーマパークは、閉幕後に観光・賑わい地区(約70.65ha)へ、2028年以降に工事を始めて2030年代前半に開業する計画です。

跡地は全部テーマパークになるの?

なりません。2020年の土地利用基本計画で、観光・賑わい、物流、農業振興、公園・防災の4地区に分けています。テーマパークは観光・賑わい地区だけです。

テーマパークの運営は三菱地所に決まったの?

2023年9月に、三菱地所が観光・賑わい地区の「事業予定者」に決まりました。2026年4月の環境影響評価の配慮書では、三菱地所を代表とする11社の計画になっています。どんなテーマパークになるのか、具体的な作品やブランドは公表されていません。

瀬谷駅から電車は延びるの?

鉄道の延伸ではありません。新交通システムは2021年に花博までの開業を断念し、今は瀬谷駅と上瀬谷を結ぶバス専用道(約2.7km、うち約1.7kmが地下トンネル)を、2030年代前半の導入を目指して検討しています。

まとめ

  • 旧上瀬谷通信施設は2015年に返還された約242haの土地。土地の使い道は2020年に4地区(観光・物流・農業・公園防災)に決まっている
  • 花博(GREEN×EXPO 2027)は2027年3月19日〜9月26日。会場建設費は最大417億円に増え、入場券は9月時点で約261万枚(有料来場者の目標の約26%)
  • 2026年度の市の関連予算は、花博関連約150億円(会場建設の市負担38.09億円を含む)、区画整理約171億円。公園整備230億円は他の公園と合算で、上瀬谷分は未公表
  • 閉幕後はテーマパーク(開業時年1,200万人)などができるが、市に何が返ってくるのかの数字はまだ無い
  • 鉄道が無く、バス専用道は2030年代前半。花博の期間中の輸送と渋滞の数字が、今後の判断材料になる

監視人は、チケット販売の月次公表と市会の委員会資料を追いかけ、数字が出るたびにこの記事を更新します。

出典

この記事は事実(出典つき)と、監視人の意見を分けて書いています。意見は「監視人の見方」の節にまとめています。数字の誤りはお問い合わせからご指摘ください。

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